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「それでは、聖蘭学園生徒会、定期ミーティングを始めます」

 生徒会室に、生徒会長・北條エリカの凛々しい声が響き渡る。生徒会室に集結したほかの役員の顔も一様に引き締まる。

 定期ミーティングは主に月一回程度、生徒会長の命で開催される。重要な事項は学期末に行われる本会議において議論されることになっているので、このミーティングでは各自学園に対しての提案や学園生活で気になったことを報告するのが常となっている。
 優秀な学生の多いこの学園において問題が起きることは非常に稀で、このミーティングが学園の運営に対し大きな役割を担ったことはない。
 今日のミーティングもいつもどおりといった内容で、各メンバーは各々部内やクラスの様子を報告するに留まっている。

「バスケ部はいつも通り楽しくやってるよ。この調子なら大会もばっちりかな。ま、今はアタシが怪我しちゃってこのザマなんだけどね」

「バレー部もみんな一生懸命がんばってます。あとは、学年全体を見ても、大きなトラブルといった話は聞いてませんね」

 真下優奈と日野七夏も、生徒会の一員としてこのミーティングに参加しており、それぞれキャプテンとして自分の部内の様子や、学園の様子を報告していた。

「それでは…、2年生を代表して、霧島さん、なにかありませんか?」
「いえ…、特に気になったことはありません」

 生徒会長から指名された霧島楓が、淡々と返答する。普段からクールな楓だが、発言の少なさは生徒会においても同様である。それでも、ときおり発する楓の意見は非常に的を射ており、他のメンバーからも一目置かれている。

 他の役員達も続々と報告を終え、一同はなごやかな談笑を始めていた。このように、定期ミーティングといっても、半ば役員同士の親睦会となるのが常なのである。



「それでは皆さん、そろそろミーティングも終了としましょう。ですが、その前に……」

 和やかな雰囲気に割って入るように、エリカが口を開いた。メンバーの視線が生徒会長に集中する。
 オホン、と大きく咳払いをして、エリカが語り出す。

「皆さん、神藤先生については、もうご存知でしょう?」

 そう言って、エリカは僅かにニヤリと微笑んだ。エリカにとって、このミーティングの本題はこれなのだ。 

「神藤先生の進退が、次回の本会議で議論されることとなりました」

 神妙な面持ちでエリカが告げる。このことは他の役員たちにも周知のようで、誰一人驚いた様子もなく、エリカの言葉に耳を傾けている。

「皆さん知っての通り、男性である神藤先生が代理で保健医を努めていることに、学生達から不満の声が相次いでいます。
あろう事か、女子生徒にセクハラまがいの行為を行っているとの報告も受けています」

 エリカが生徒会長らしい、凛とした口調で述べる。その間、誰も口を挟まずエリカの発言に集中している。

「このことを受け、大変異例ではありますが、神藤先生の解任の是非が我が生徒会において問われることとなりました。これは私や理事長の独断でなく、教職員の間でも了承が得られています。
学生会議での決定事項が絶対なのは、この学園の伝統です。すなわち、神藤先生の進退は私たち生徒会の判断に懸かっているのです」

 ここでいったん口を止め、役員たちの顔を見渡す。

「会議では皆で議論は行いますが、最後は役員一人一人での投票です。皆さん、私情に流されること無く、学生たちの代表という立場での投票を心がけてください」

 なにか意見はありますか、と最後に付け加え、エリカがもう一度役員たちを見渡す。
 エリカと目が合った七夏が一番にその口を開いた。

「そうだよね、アタシたちは皆の代表だから、責任をもって投票しなきゃ、ね?優奈」

 そう言って隣にいる優奈へにっこりとウインクする。優奈も親友に同調し、

「うん。すこしでもこの学園がよくなるように、私たちがいるんだものね」

 そうですよね、とエリカへ賛同を求める。

「ええ、日野さんや真下さんの言った通りです。皆さん、学生全員が納得できるような投票結果になるよう、生徒一人一人の意見に耳を傾けるよう心がけてくださいね」

 エリカの締めくくりの言葉に、役員たちがうんうんと頷く。それを見て、エリカは満足げな表情で微笑んだ。
 エリカにとって、万が一でも神藤に肩入れするような役員がいないかどうか、探りを入れるのがこのミーティングの目的なのだ。よもやこの中に神藤を庇おうと思っている役員がいるなどとは露ほどにも思っていないだろう。



 ほどなくしてこの場は解散となり、各々帰宅の途につきはじめた。その中に、学園の玄関とは違う方向へ足を運ぶ二人の姿があった。

「ふふっ、七夏ちゃんったら、すっごくわざとらしいんだから。私可笑しくなっちゃったよ」
「え~そうかな~。でもエリカちゃんは満足そうだったよ。アタシたちが反対票を入れるなんて、夢にも思ってないんだろうな」

 真下優奈と日野七夏が仲良く笑いあう。

「でも、大丈夫かな…。私たちはともかく、他の人はみんな賛成票を入れるんじゃないのかな…」
「そうなんだよね…。でも、先生のことだから、きっと大丈夫だよっ」

 一瞬不安そうになる優奈を七夏が元気付ける。

「すぐにみんな、神藤先生が素敵な先生だって気がつくよ。アタシたちみたいにね」

 そう言うと、優奈は頬を桃色に染めながら頷く。

「ふふっ、今日は先生、私たちにどんなご褒美くれるかな…?」
「あっ、優奈っ、抜け駆けはダメなんだからねっ!」
「えへへ、わかってるよ。二人で一緒に気持ちよくしてもらお?」

 微笑ましくじゃれ合う二人。
 二人の牝奴隷は今、愛する主の待つ保健室へと向かっていた━━。
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